狼と香辛料 支倉凍砂 電撃文庫

狼と香辛料 (電撃文庫)

わりとおもしろかった。アニメを一期二期見て神アニメだと思っていた。機会があったら読んでみようと思っていたものの、なかなか読み始められなかったので、ひとに借りて読みました。

アニメが原作通りつくっていたらしく、先の展開は知っているので、そこはそれほどおもしろみを感じなかった。アニメだと、ロレンスがホロに対して、目の前で裸でいても少し焦るだけだったのに違和感を感じていた。原作ではそこらへんのロレンスの心情がしっかり描かれていた。いままでずっと独り身だったから、ひと恋しいのも含めて、ホロのかわいい仕草にめろめろだったのに、にやにやした。ここまでかわいい娘と一緒にいて、しかもその娘が性に無頓着だったら、そりゃ困惑しますわね。無頓着というか、そのうえでロレンスをいじっておもしろがっている面がありそうなところが、ホロの魅力なのかもしれない。

ページ数が329ページとラノベとしては厚い本だろう。一冊で見事に完結していて、それでいてこれからを感じさせるその構成力に息巻いた。金色に実った麦畑のうえを風が駆け抜ける様子を、狼が走る、とは良く表現したものだ。読んでいて情景が浮かんできて、あたかも原風景のように感じさせる筆力がすごい。

ホロがとにかくかわいい。嫉妬したり睨みつけたり、流し目を使ったり上目遣いで迫ったり。表情豊かで、一緒にいたら絶対にたのしいだろう。ホロを出しぬいてやろうと考えるロレンスだけど、一筋縄ではいかないホロに手玉に取られる、そんなところすら微笑ましい。

小説としての魅力と、ライトノベルのキャラクターの魅力がうまく交じり合ったいい本でした。

行商人のロレンスは馴染みの村で狼の化身の娘、ホロを拾う。荷台に乗っていたホロは豊作の神だった。村を出て自分の生まれ故郷である北の街ロイツへ、一緒に向かってほしいと言う。ロレンスたちは次の町パッツィオへ向かう途中の教会でゼーレンという男に出会う。ゼーレンはロレンスにカネ儲けの話を持ちかける。近々銀貨が再発行されると言う。パッツィオに到着したロレンスはホロにねだられてりんごを買う。ロレンスの荷馬車に積んでいた毛皮をミローネ商会に卸すことになり、ホロは口を挟む。毛皮はりんごの匂いをはっする上等なものだと商人に説明し、毛皮を高値で売る。酒場でふたたびゼーレンに会ったロレンスは、ゼーレンの儲け話にのることにする。ロレンスはその話をミローネ商会へ持っていく。ゼーレンの後にライバルのメディオ商会がかかわっていることを調査したミローネ商会は、ロレンスと商談をする。再発行されるトレニー銀貨を大量に集めて、貨幣売買で利益を出す。その夜。ロレンスとホロはメディオ商会の人間に襲われ、ホロがさらわれてしまう。ミローネ商会に逃れたロレンスだったが、メディオ商会からホロが狼の化身であることを示唆する脅迫状が届く。ロレンスはホロを取り戻すために、ミローネ商会に、国王を相手に大量のトレニー銀貨をたてに特権を得る方法を提案する。メディオ商会からホロを奪還したロレンスだったが、地下道で囲まれてしまう。大きな体躯の狼に戻ったホロはメディオ商会の面々を一蹴する。ホロの本当の姿を見ておびえるロレンスを前に、ホロは姿を消す。ミローネ商会のトレニー国王との交渉は成功したが、銀貨の運搬料などにカネがかかり、思ったほどの利益を得られなかった。ミローネ商会はこれからのロレンスに期待して、特権で得た利益をロレンスにわけ与える。何食わぬ顔でロレンスの荷馬車に乗ったホロがいた。二人の旅はつづく。