不思議系上司の攻略法 水沢あきと メディアワークス文庫

不思議系上司の攻略法 (メディアワークス文庫)

かなりおもしろい本だった。作者の前作『りんぐ&りんく』がそれなりに好きで、続編が出ないかなーと思いながら待っていたんだけど、次に出たのは新シリーズだった。表題の「不思議系上司」から頭がお花畑の不思議な上司なのかと思った。仕事のときは論理的で冷静な女性、休日はメイド喫茶メイドさんをしているという「不思議系」だった。

内容は、SEの主人公が上司のヒロインと仕事上のトラブルを解決していく話。これだけだと『なれる! SE』と似ているものがある。『不思議系上司』は上司が管理職でプロジェクト全体の問題を解決するのに対して、『なれる! SE』はネットワークエンジニアが技術的な課題や運用上の問題を解決していく話。

推理要素に似たものがあった。問題を解決していく過程で、別部署の社員のリベート問題をつまびらかにしていく。リベートは、裏ガネを受け渡す約束をして、ある会社に便宜をはかる方法。どうやってリベートを証明するかに知恵をしぼっている部分が、推理小説に似ていた。

それにしてもヒロインがかわいい。ヒロインは一人しか登場しないんだけど、そのヒロインが魅力的なので、読んでいてわくわくしてくる。ヒロインは二面性を持っている。会社ではいわゆるできる上司で、主人公がまごつきながら話していると「結論からお願いしたいのですが」p.67、と冷たく言い放つ。一方、メイドさんで給仕しているときは、やわらかい笑顔も見せたりする。その二つの顔に魅力を感じる。

美人でかわいい上司とお近づきになりたい!という願望が詰め込まれた本だ。

この一冊できれにまとまっている本です。続巻が出ていることを知らないで読み終えたけど、つづきを読むのがたのしみです。

SEの梶原健二はお得意先の誘いで秋葉原メイド喫茶へ行く。そこで出会ったメイドのカヨが目を見張るほどの美人で心惹かれる。月曜日。出資元の華泉礼商事から着任した年下の女性上司、石峰真夜はメイドのカヨにそっくりだった。真夜は健二のチームの上長になり、コスト削減のための策を実行し、チームから反感をかう。真夜とカヨを確かめるため、健二は再びメイド喫茶を訪れ、確信する。真夜に、このことは黙っていてほしいと頼まれた健二は、自分が真夜の秘密をもらさないことを証明するために、自分もメイド喫茶で働くことにする。健二の関わる一大プロジェクトで問題が発生する。発注していたサーバーが受注出来なくなってしまう。メイド喫茶でテレビの取材があり、テレビにカヨが映ってしまう。別部署の社員はこれをネタに真夜を退任させようとしていた。健二はこの社員のリベートを暴く。サーバーは機転によって上位機種を手に入れる。すべてが丸くおさまり、真夜は話す。「梶原さんは、どちらが本当の私だと思いますか?」。エピローグ。真夜が健二の家にメイドさんとして給仕しにきてくれると言う。