『彼女は眼鏡HOLIC』

彼女は眼鏡HOLIC (HJ文庫)

彼女は眼鏡HOLIC (HJ文庫)

読まずにはいられなかった本。最近読んだ中で一番記憶に残った本です。プロローグを20回は読みました。HJの公式サイトで冒頭が立ち読み出来ます。そういえばHJ文庫の本を初めて読みました。

眼鏡がテーマというのもあるけれど、全体的におもしろい。話の構成がうまい。型にはまっているといえなくもないけど、読んでいて余韻が残る印象深い展開になっていると思います。

貴重な眼鏡や特殊能力を秘めた《魔鏡》と呼ばれる眼鏡を、収集し保管・保守するアルハゼン眼鏡銀行。その組織の特殊エージェントである深鏡めめこは、眼鏡事件が起こると予見される御園学院に生徒として潜入転校する。すご腕のエージェントのめめこだったが眼鏡を掛けていない人とはコミュニケーションがとれないという弱点もあったりします。転校先のクラスに眼鏡を掛けた生徒は黒野亞衣ただひとりだけ。必然的に亞衣と仲良くなり、問題の眼鏡事件『眼鏡狩り【奪】』と『眼鏡狩り【着】』の真相を追いつつ、亞衣といちゃいちゃする日々。めめこの同僚のルシアは、組織で育っためめこに普通の高校生としての生活も体験してほしいと思って、今回の事件をめめこに命じたのだった。そして、新入生歓迎バザーで犯人は姿を現わし、亞衣を襲う。めめこと亞衣は二人で力を合わせて犯人を倒し、事件は解決する。事件の影で暗躍していた組織・ダヴィンチとは――というところでつづく。

めめこが眼鏡を掛けていない相手ともコミュニケーションをとれるようになるには、めめこの手で正面から相手の眼鏡を外す事。というわけで、亞衣の寝込みを襲おうと考えるめめこ。「眼鏡が……ない?」p.93。当たり前だろ。

「そもそも、眼鏡が似合わない人なんて、世界中どこを探したっていないんです。眼鏡は人のために、人は眼鏡と共に。そうやって一緒に歩んできたんですっ。今の森生さんがどれだけ素敵か……それが解らない人はモグリですっ。そんな人の言う事を気にしちゃいけません。森生さんは普段から眼鏡を掛けるべきですっ。絶対ですっ!」p.108。

亞衣と一緒にお風呂。亞衣の湯船に浮かぶ乳を見ためめこ「どんぶらこー、どんぶらこー」p.128。笑える。

「そして、眼鏡と正しく向き合えば、世界とも正しく向き合う事ができます。信じられないかもしれませんが、黒野さんが今こうして見ている景色は、最初からそこにあったものなんですよ。ある筈のものをきちんと見る事ができないのは、無意識に目を逸らしていたから。でも、世界はずっと黒野さんに見てもらうのを待ってたんですよ。眼鏡を掛けるという事は、共に世界のあるべき姿を見つめるという事なんです」p.138。世界と正しく向き合う。

めめこは眼鏡使いとしての能力を最大限引き出すために身体の成長が止まった。百メートルを一秒で走れます。

任務のために亞衣とバザーに参加出来なくなってしまう。『亞衣ちゃんとお買い物』p.222。この伏線はうまいなあ。

ラストで、眼鏡を掛ける位置はミクロ単位というのが微妙だったかな。

戦いは始まったばかり、みたいな終わり方。話に眼鏡を絡められるなら、つづきを読んでみたいかな。