『神様のおきにいり』

神様のおきにいり (MF文庫J)

神様のおきにいり (MF文庫J)

この作品はこのまま一本の映画に出来そうなおもしろさです。なんで今までこの本を読まなかったんだろう。秀逸な本です。

稲村智宏の家には家神が住んでいる。名前は珠枝さま。元は山神だったという珠枝の力を借りたいと、智宏の家にやってくる国土交通省特定土地監視員の楠木兼康と共に裏山の怪異を調査し倒しにいく。智宏は幼なじみの有坂瑞穂になんとなく苦手意識を感じている。兼康と同じく怪異を調査しにやってきた兼康の妹・楠木真希とコヒロ。さまざまな人物・人外の登場で尋常ではない生活を送る主人公の話。

子どもの背格好なのに「ワシ」とか古風で偉そうなしゃべり方で、何千年も生きている神様という珠枝の設定がどストライクです。『クダン』もそうだけど、作者は妖怪とかが好きな人なんだろうなあ。

学校帰り立ち寄った社で桜の精・好香と再会。過剰なボディタッチをしてくる好香がかわいい。んで、智宏と好香に因縁をつけてつっかかってくる真希。コヒロは真希の抑止力みたいなものか。

瑞穂の部屋にあらわれる怪異、「声が聞きたいから、指一本分だけ開けてよ(p.136)」ちょっとした怪談です。真希は怪異の解決のために瑞穂の家を訪れる。そこで智宏の名前を聞いて突然奇声を発するコヒロ。ひかりものに買収されるのがかわいい。

兼康の調べで、瑞穂を脅かす怪異はぬっぺらぼうだとわかる。調査する兼康を襲う珠枝。そしてこの世を去る兼康。どういうことだ?と思ったけど、あとあとの伏線か。

智宏の父親が死んだのは智宏の所為で、智宏は瑞穂を殺したがっていて、珠枝は瑞穂の命を狙っている。これは予想外のおもしろい展開です。

不思議と妖怪と神様が入り混じったちょっと心温まる話でした。