『ネガティブハッピー・チェーンソーエッヂ』

ネガティブハッピー・チェーンソーエッヂ (角川文庫)

ネガティブハッピー・チェーンソーエッヂ (角川文庫)

滝本竜彦のデビュー作。『NHKにようこそ!』と『超人計画』は読んだので、とりあえず既刊で読んでいないのはこの本だけだった。というのと、実写映画化が決まったということで読むことに。

「ああ、世の中ってつまんねえなあ。なんかおもしろいことないかなあ。そうだチェーンソー男と戦おう」というような話ではありませんが、つまらない日常とおもしろそうな非日常に生きる少年と少女の話です。何のために戦っているのかはわからない、けど何かのために戦いたい。やりたいこともやることも見つからないから、何か使命のようなものを持ちたい。そんな感じの話です。

 彼のように格好良くなれない。彼のように、最後まで頑張ることはできない。だけども本当は、それが当たり前のことなのだ。途中でいろいろ諦めておくのが、一番まっとうな、普通のやり方なのだ。
p.221

チェーンソー男と戦うことを諦めてくれとヒロインを説得する主人公。

 他人と楽しくやってたって、いつかは必ず終わりが来る。だから一人で、ずうっと変わらない何かを作ろうと頑張り始めた。あれはきっと、そうゆうことだったんだろうとオレは思うぜ。まぁ、あいつのことだから、本当はなんにも考えてないかもしれないけどな。
p.261

 彼女だけは助けてくれ。オレは死んでもいいんだ。
 ここで終わらせてくれるのならば、それは最高のエンディングだ。
(略)
 お前はもう、知っているんだろう?
 お前と会った、あのときから、オレの願いはただそれだけ。
 だから、叶えてくれ。
 オレを、いますぐ
 いますぐ
 オレを――
 オレを、殺してくれ。
p.268

 オレは空を仰ぎ、叫んだ。
「なぁ能登!」
 泣きじゃくりながら、力の限り叫んだ。
「生きているオレが羨ましいだろう!」
p.281