ももへの手紙

映画。公開最終週。150席くらいの劇場の四分の一程度が埋まっていた。

子ども連れが多かった。右の席のひとも左の席のひとも前の席のひとも子ども連れだった。

子ども向けアニメ。だけど、大人もそれなりに楽しめるアニメだと思う。笑える場所がいくつもあって、子どもが笑っている声がそこかしこで聞こえた。「ああ、ここが子どもにとっては笑いどころなんだ」と思った場面がいくつかあった。マメがマンドラゴラみたいな小さいやつと一緒におどっているシーンで思った。

メッセージ性を感じる。お父さんが死んでしまった→お母さんが危ない→わたしがなんとかしないと! と思う過程が良く描かれている。

等身大の登場人物を描き、それほどデフォルメすることもなく描いたのが良かった。ヒロインのかわいいところも、ぶさいくなところも、両方描いていて、好感を抱いた。特に、ヒロインが鏡に向かって睨みつけているシーンのぶさいくさといったら。そこがかわいい。

ただ、テーマが安易で、シナリオが月並みだったのは残念だった。もちろん、子どもにもわかりやすい、という意味では成功していると思う。しかし、良くあるテーマ、先の読める展開だったのは少し退屈に感じた。

あらすじ

空から水滴が落ちてくる。宮浦もも(美山加恋)は父親を亡くし、母のいく子(優香)と瀬戸内海の汐島(うしおじま)へと移り住む。少し人見知りなももは田舎の雰囲気になかなかなじめずにいた。ももは屋根裏部屋で「化物御用心」という妖怪絵綴りを見つける。地元の子ども、陽太と海美たちが、橋から海への飛び込みを誘うが、ももは帰ってしまう。

いく子が島外へ出る船に乗り込むとき、ももは、ぼやけた人影のようなものがいく子に寄り添っていることに気がつく。家に帰ると、なぞのぼやけた人影に追いかけられる。ももはその人影が見えるようになり会話する。三人の妖怪は、イワ(西田敏行)、カワ(山寺宏一)、マメ(チョー)だと自己紹介する。三人がももにだけ見えるのは、ももに空から落ちてきた水滴があたったせいだとイワが説明する。ももは三人が田畑を荒らしたり、ものを盗んだりするのをとがめる。ももはカワからうばった通行手形を人質に取り、三人を説得する。通行手形を割られると三人は消えてしまう。

ももには心残りがあった。父親が他界する直前、父親とけんかわかれした。父親は「ももへ」とだけ書いた手紙を残して、いなくなってしまった。

ももは三人が田畑を荒らさずに食べものを得る方法を考える。四人で山へ行ってみることにする。高地作業用のレールを使って山を登っている途中、猪を見つけた妖怪三人はうりぼうを捕まえる。怒った猪が追いかけてきて、なんとか山頂まで逃げる。展望台から見た景色がももの琴線に触れる。そんな交流を通じて、四人は仲良くなる。三人は、自分たちは見守り組だと話す。父親が空へのぼるまでの間、のこったももといく子の様子を見守る役目だと言う。ももは空へ手紙が出せることを知る。しかし個人的な手紙はご禁制だった。

いく子の大事にしていた、父親がいく子に贈った手鏡を、カワが割ってしまう。屋根裏を見たいく子は、三人が盗んでいた野菜や小物を見つける。いく子はももを詰問する。ももは正直に妖怪の存在を話すが信じてもらえず、家を飛び出す。台風が近づいていた。ぜんそくの持病があり、調子が悪かったいく子は、大雨の中ももを探す。ぜんそくが悪化したいく子は倒れてしまう。いく子の急病を知りももは家に戻る。医者は島内におらず、台風の影響で救急医療も使えない。ももは自分に出来ることを考える。イワたちに相談するが、ひとの生き死にを左右することは出来ないと言う。ももはひとりで島をつなぐ大橋を渡ろうとする。郵便局員の幸市はももと一緒にオートバイで大橋を渡る。しかし強風で苦戦する。そこへ、マメの号令で集まった妖怪たちが協力し、自身の身体でドーム状の屋根をつくり、オートバイを支援する。妖怪たちのおかげでいく子を救うことが出来た。

父親が空へ行き、役目を終えた三人は、水滴に戻り姿を消す。島のお祭り。火をともしたおちょろ船を夜の海に浮かべる。おちょろ船はわらで編んだ小型の屋形船を模したもの。一隻のおちょろ船がもものいる砂浜へ戻ってくる。船には手紙が入っていた。

ももへ

よくがんばったな。
お母さんをよろしくたのむぞ。
いつも見てる。

父より

ももは地元の子どもたちと仲良くなり、橋から高飛び込みする。おわり。