『ぷりるん。〜特殊相対性幸福論序説〜』

ぷりるん。~特殊相対性幸福論序説~ (一迅社文庫)

ぷりるん。~特殊相対性幸福論序説~ (一迅社文庫)

中盤は、悲しくて気持ち悪くて、どうしてこんなに苦しい思いをして本を読まなくちゃいけないんだろう、と考えたけど、最後まで読んで良かった本でした。おもしろかった。しばらくはこの本の印象が頭に残りつづけるだろうなと思う。

一迅社文庫の本を初めて読んだ。ライトノベルと呼ぶには性描写がいくつか出てくるし、話自体も暗い内容です。しかし、この作者の本はいつもながらに読後感が抜群に良い。

主人公のユラキは若干性格が老成した高校二年生。天真爛漫でお兄ちゃん大好きな妹のうずみ。クラスメイトでみんなのアイドルな桃川みう。主人公が所属する電子計算機研究部の部長、孤高の生脚美人、小野塚那智。自由奔放で自分の欲望に正直な姉の綾。ある日突然「ぷりるん」しか言わなくなった幼なじみの少女。第一話、ユラキはひそかに思いを寄せるみうとデートをする。しかしみうは他の男ともデートをしているということをみうから聞く。ユラキは悩みつつも、一番の友人と思っていたクラスメイトのノボルの陰口によってみうが複数の男と関係を持っていることを知る。第二話、性にあまりにも開放的な姉が放浪の旅から帰宅し、セックスをせまられたりしつつも、ユラキが両親の子どもではなく姉や妹と血がつながっていないことを明かされる。翌日、みうに関係を強要されることを断ると、みうは癇癪を起こし絶叫する。ユラキは仕方なく成り行きにまかせる。どうにでもなれ。そのことを姉に推し当てられうずみとの関係もぎくしゃくする。みうと数度関係を持ったが、みうは他の男と遊びに行くことをユラキに報告する。第三話、うずみはユラキへの兄以上の思いを告白し家を出る。相変わらず他の男との関係を詳細に話すみう。ユラキは精神的に追い詰められ勃起不全になる。第四話、軋轢があったノボルとカラオケに行き、ユラキは思いのたけをぶちまける。みうから電話がかかってきて、ユラキが自分の思い通りにならないみうは死ぬという。駆けつけたユラキはみうに背後から殴られ拘束されるが、みうを説得する。第五話、精神的に快方に向かうユラキ。うずみは家出から帰ってくる。「まだ、うずみのおにいちゃんで、いてくれる?」「何があっても、いつまでも、ぼくはうずみのおにいちゃんだよ」p.248。ぷりるんこと花菱真以子は、ずっとユラキを見守り、ユラキの幸せを願っていた。おわり。