『二人で始める世界征服』

二人で始める世界征服 (MF文庫J)

二人で始める世界征服 (MF文庫J)

第4回MF文庫Jライトノベル新人賞 審査員特別賞受賞作。

おかざき登というと新人賞投稿の常連さんという印象が強いので、このひとの本が読めると思うとうれしくてたのしみで仕方ありません。

うまく一冊にまとまった本です。オリジナリティのある設定はあまりなく、奇抜なキャラクターもいませんが、全体的に丁寧に書かれていて安心して読めます。展開が唐突で行き当たりばったりな感はあります。アホらしくてとんでもない展開が笑いを交えて書かれていきます。ラノベ初心者向けの入門書にはいいかもしれない本でした。

平凡な主人公・赤尾竜太は、高校進学を控えた春休みに犯罪結社『アンシーリーコート』のレッドキャップ隊と名乗る強盗団と出くわす。時は流れて入学式当日、幼稚園の頃におもちゃの指輪を探してあげたという少女・久喜島千紗と再会する。小学生からの幼なじみの片桐ありすも交えて蹴られたり一緒に昼食を食べたりして仲良くなりつつ。五月の頃、千紗の両親が事故で他界してしまい、竜太は「もし、僕にできることがあるなら何でも言ってね」と言って落ち込んだ千紗を元気づける。「わたくしの世界征服を、手伝ってほしいんです!」という千紗の言葉に、竜太はドラゴンに改造にされて秘密結社『デーモンテイル』の世界征服を手伝うことに。

「いえ、あの、会社ではありません。秘密結社なんです」p.60。意外な展開になってきた。ヒロインが特撮好きな時点である程度予想は出来たけど。「なおも何かが噴出する「ぷしゅーっ」という音は続いている。驚いて久喜島さんの顔を見やると、いつの間にか彼女はガスマスク的な何かを装着していた。」p.63。笑える。「あ、大丈夫です。ちょっと改造させてもらっただけですから」p.69。そんな馬鹿な。ああ、もっとかっこよく改造してくれたら良かったのに。「ははは。何かもう、ツッコミを入れる気にもなりませんよ、ドクター。」p.74。主人公が冷静過ぎて笑える。

世界征服のための地道な活動をするはずが、溺れる子どもを助けたりしつつ。銀行強盗を計画した千紗ことラプンツェルだったが、たまたまレッドキャップ隊の銀行強盗に遭遇してしまう。改めてリトル・レッドフードと対決するリンドヴルムこと竜太だったが、そのドラゴンの身体の装甲の厚さと力でレッドキャップ隊を退ける。謎の二人組であるラプンツェルとリンドヴルムはニュースで話題になったり、世界征服という名の社会奉仕活動などをしたりしつつ。

ある日、千紗と二人で図書委員の仕事をしていた竜太は、突如現れたリトル・レッドフードにすぐに学校から逃げることを勧められる。爆発物を持ち生徒たちを人質に、銀行強盗のときに捕まった仲間の解放を要求するレッドキャップ隊。

「この、年齢とツルペタ加減のアンバランス!」p.183。……ああ、そういうひとたちなんだ。

爆発に巻き込まれて深い傷を負う竜太だったが、リトル・レッドフードの正体がありすだと気づき、爆発事件で国家権力に銃撃されたありすを心配し、ありすを探す。アンシーリーコートの野望をつぶすためにアジトにおもむき、悪事を暴く。おわり。

「は? ……あ! あのときか! 違う違う、僕の父親は野党の鯨岡議員だよ!」p。244。なんですとー。ここの部分は裏をつかれた伏線だったな。

「それより、あなたたちって世界征服するんでしょ?(略)あなたたちがやってくれた方が優しい世界になりそうよねえ」p.255。

世界征服は始まったばかりみたいな終わり方ではあるけど、中途半端につづく話じゃなくてよかったと思いました。

追記 2008-11-25 21:30

MF文庫J編集部ブログ おかざき登先生インタビュー!

今書いている2巻では、ラブコメ分大幅増量中です。

第二巻を執筆中みたいです。