『セキララ!!』

セキララ!! (ファミ通文庫)

セキララ!! (ファミ通文庫)

第9回えんため大賞奨励賞受賞作品。最初はあんまり読む気がなかったんだけど、読んでみたらとにかく笑える本だったので満足の一冊です。

中学生のころに書いた小説『邪王戦聖記』のヒロイン・柊火琉奈(ひいらぎかるな)が、小説の設定通りの能力・格好で主人公・拓巳の前に姿を現わした。自分の作った話にふりまわされ、過去の恥ずかしーい過ちに悩まされる主人公の話。

火琉奈登場シーン。本物の火琉奈だと証明してみせろと言った主人公の目の前、街なかで穿光刃(ライトニング・ブレイド)を空へとぶっ放す火琉奈。唖然とした主人公の顔が笑える。

物語の収拾をつけるために、『邪王戦聖記』のファンでもあり猫が好きらしいというブタマルGTさんに協力を仰ぐ拓巳と久実本。餓狼の雰囲気をまとったただごとではない男・ブタマルGTの登場におどろく二人。主人公の唖然とした表情が笑える。

何故か火琉奈のことを「姐さん」と呼び始めるブタマルGT。「……なにを言ってるんだ、この人は。意味がわからん。(p.149)」ブタマルGTのキャラが強烈過ぎて、話がいきなりおもしろくなった。

桜の告白。自分が『邪王戦聖記』のファンであり、ハルハナフラワーという名前で、最初から主人公のことを知っていて、そのために主人公と同じ高校にも入学したという桜。どう読んでも桜に欠点が見つからないのに、もうなんか主人公がクソ野郎過ぎて。

主人公が死ぬか生きるか切羽つまった場面なのに、猫語でチャットをするブタマルGTと久実本。「マジメにやれよ!(p.249)」ふざけた会話内容が笑える。

「さすがに生身じゃ無理……ここはいっちょ、第二形態になるしかありやせんか……」
「なれるんですか第二形態!」
 非現実きわまるが、この人なら、あるいは!
「いや、なれやせん。ちょっと雰囲気を出したくて」
 こ、この人、マジでスゲェ……! この状況、真顔でこれを言えるとは。
 すごいバカか、もしくは本物のバカのどっちかだ。
p.278

クライマックスの緊迫した場面なのに笑える。

とにかく笑える話でした。最後の最後まですっきり笑える作品。